敵を知り戦略を練る!

「声帯結節(せいたいけっせつ)」とは?

 大声を出し続けたり、無理のある発声でしゃべり続けると、声帯の粘膜が変質して発声に支障を生じるようになる症状である。「歌手」や「浪曲師」に患者が多かった事から「謡人結節(ようじんけっせつ)」と呼ばれていた時代もあったと聞く。  

  病変の様子は、

 その時の先生の説明が一番わかりやすかったのでそのまま載せておこう。

「つまりですね、本来イカの刺身みたいにふにゃふにゃグヨョグニョのはずの粘膜が、振動のし過ぎで表面の水分が抜けて、スルメみたいになっちゃったと……」

 なーるほどスルメね。上手い事言うなあ……って、スルメは水に漬けたってイカ刺しには戻らないじゃないですかあ!

「そうですね、放っておいて治る人もたまにいますが長く掛かります」

 私も「声」を売って生きてきた人間である。仲間に「声帯結節」や「ポリープ」の1人や2人いなかったわけじゃない。だから日頃から無茶な発声や出し過ぎには十分注意していたのである。しかし、まさか、「激しい咳」で声帯にしゃべり過ぎと同じ負担が掛かって結節になる場合があるとは思わなかった。

 夜寝ている間じゃどうしようもないよー。


 で、先生が提示してくれた治療の段取りはこうだった。


 まず「投薬」。いわゆる「ステロイド剤」を投与して様子を見る。

 薬の効き方は体質で個人差があるので、効果の出方を見てから3つの選択肢……


1.あきらめてだましだまし

 声が出ないワケではない。現状のままでもほぼ普通にしゃべれるし何とか仕事もできる。だから多少の不自由を我慢しつつ、だましだまし自然治癒の可能性に賭ける。


2.局部麻酔で小手術

 鼻から内視鏡を入れて、喉仏のちょい上くらいから気管内まで注射針を突き通す。内視鏡で照準を定め、注射で直接患部にステロイド剤をぶっかける。ホントに先生は「ぶっかける」って言った。


3.全身麻酔で切除手術

 薬が効かないようなら、設備のある大きな病院に転院して全身麻酔の切除手術。「切る」と言うよりも削り取る感じらしいのだが、2泊3日の入院。術後数日から数週間ほどの「絶対無言」……

 ……むーんんんん、何だか頭の中がムンクの「叫び」 みたいになってきたよ。


 私は「外科処置」が大好きだ。ここまでの半生、足のアザも切り取ったしアレルギー性鼻炎も焼き切った。患部を取り去って治る物は全て取ってきたのである。しかし今回ばかりは、切った後の影響がいかにも大き過ぎた。[3]を選んだらどれくらいで仕事に復帰できるのか想像もつかない。ゆえに迷いが生じた。

「とりあえずお薬を飲んでみてください。決めるのはそれからでも……」

 こうして「声帯結節」との最初の戦いが始まった。

(続く) 

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